「営業のための取材術」と題して、7回に渡ってお話ししてきましたが、結局は「相手に対するリスペクト」と「ラポール作り(=アイスブレイク)」に尽きるということが結論のようです。
実際、僕は職業としてライターをやっていますが、ライターにとって取材は最重要事項です。その僕が、結局はこの2つしか心がけていないということが、書いているうちにはっきりした次第なのです。
●とはいえ、最後にテクニックを
そうはいっても、心がけだけでは……と思う気持ちも分かります。
僕自身もテクニックから入って、ようやくこのようなマインドに達したと言えます。
ということで、これらを心がけていたら、自然と相手に対するリスペクトが湧くようになってきたというテクニックをご紹介して、取材術の最後を締めくくりましょう。
それは、傾聴のテクニックです。
- 笑顔
- うなずき
- オウム返し
- 要約
- ペーシング
- ミラーリング
たったこれだけです。ご存知の方も多いでしょうが、おさらいしておきましょう。
●笑顔
笑顔は重要です。怖い顔をしている人に話をするのは疲れます。
ただ、ずっと笑顔というのも変ですよね。相手が深刻な話をしているときには、笑顔だと馬鹿にしているのかと思われるかもしれません。
これは、顔のニュートラルポジションを笑顔にしようということです。後述するミラーリングに徹すれば、相手が深刻な顔をしていたら、やはり深刻な顔をすべきです。
しかし、通常は笑顔でいる。また、肯定感を強めるために笑顔を使う。こういう意味です。
●うなずき
これも笑顔同様、肯定感を強めるテクニックです。少し大げさに思えるぐらい、相手の言うことに対してうなずきましょう。
ただ、相手が謙遜しているときには、ご注意を!
●オウム返し
次の要約と違って、こちらは相手の言ったことのうち、そのポイントとなる部分を、ほぼそのまま繰り返すことです。
「まあ、私もいろいろとありましたよ」
「いろいろありましたか」
「戦後すぐにね、満州から引き揚げてきたときに」
「満州から」
「ソ連軍に捕まりそうになったのだけど、親切にしてあげていた中国人の陳さんが・・・」
「陳さんが」
こんな感じです。文字にすると何だかバカにしているようですが、実際にやると「この人は聴いてくれているな」という印象を与えます。
●要約
要約はオウム返しと似ていますが、ややこしい話を要約して、「この通りですか?」と確認することで、きちんと聴こうとしているという印象を与えます。時々要約した内容が間違っているときもありますが、それはそれで意志疎通のためには必要なことです。
「まあ、私もいろいろとありましたよ」
「うんうん」
「戦後すぐにね、満州から引き揚げてきたときに、ソ連軍に捕まりそうになったのだけど、親切にしてあげていた中国人の陳さんが・・・(以下略)」
「なるほど。危なくソ連の捕虜にされそうになったのに、中国人の方に親切にしていたおかげで、シベリア行きにならず、無事に帰国できたということだったんですね」
「そうそう」
●ペーシング
ペーシングと次のミラーリングはよく似ています。一緒に考えてもいいでしょう。
ここでは、一応区別します。ペーシングはペースを合わせることで、主に音声系を合わせるイメージがあります。
たとえば、相手が早口ならこちらも早口に、逆にゆっくり話す相手にはこちらもゆっくり話すようにする、というようなことです。
声のトーンも早口な人は高くなりがちだし、ゆっくり話す人は低いことが多いので、それに合わせませす。
●ミラーリング
ミラーリングは、鏡のように相手の動作に合わせることですが、実際に鏡の真似をしたら、相手はバカにしていると捉えるでしょう。
ゼスチャーの大きさや、表情を合わせるということだと考えてください。
相手が会社員の場合には、僕もスーツを着て取材に行きます。また、居酒屋の取材であればカジュアルな格好で行きます。これもミラーリングの一種と言えるかと思います。
いかがでしょうか? 全部できていますか?
僕が見る限りでは、できていない人が多いように思います。自分では大げさだと思うぐらいがちょうどいいようです。無理をする必要はありませんが、「ややおおげさ」を心がけてみてください。
取材術については以上です。
次回からは、またライティングについて書いていきたいと思います。
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