今回は、「Ri-Turban’sの法則」の「b」について書きます。
ベネフィットとは
前回も書いたように、「Ri-Turban’sの法則」の提唱者である丸山耕二氏は、BenefitとRiskを合わせて「メリット/デメリット」としています。初心者向けに分かりやすくしたのだと思いますが、僕に言わせると余計ややこしくなっています。
ここでは、ベネフィットを正面から捉えてみましょう。
ベネフィットは、通常「便益」と訳されます。ですが、この便益という言葉が分かりにくい。普段使わない言葉だからです。そこで僕は、「顧客や使用者から見た価値ぐらいの意味で捉えておけば間違いないと思います」と説明するようにしています。
ベネフィットには、以下の3つの観点があります。
- 機能的ベネフィット
- 情緒的ベネフィット
- 自己実現ベネフィット
以下に説明していきます。
わかりやすいが差別化しにくい機能的ベネフィット
一番わかりやすいのが機能的ベネフィットです。
商品やサービスの機能ですから、これを知らない経営者やセールスパーソンはいないはず。ユーザーにとっても一番関心があるので、理解してもらいやすい部分です。
機能的ベネフィットがどういうものかについて、詳しく述べる必要はないでしょう。カタログを見てもらえば、いくらでも具体例があります。
わかりやすいため説明も容易ですが、差別化しにくいというマイナス面もあります。
世界初の新商品であれば別ですが、どんなすぐれた機能もすぐに真似されて、あっという間に陳腐化していきます。
アイデアそのものの特許を取得していたり、莫大な研究開発費を掛けて常に最先端のものを作っていたりしない限り、機能的ベネフィットで差別化するのは難しいと言えます。
機能に大差ないなら情緒的ベネフィットで選んでもらう
スマートフォンのような(まだ今のところ)先端商品であれば、新製品のほうが機能が良く、先立って市場に投入できれば、数ヶ月程度は有利に販売できることになりますが、もはや最先端でない商品は、どの会社もあらゆる機能を実現しているため、買い手としては違う観点で選ぶことになります。
一つは、価格です。通常は、安いほうを選ぶ。
ただし、必ずしも安いものが選ばれるとは限りません。たとえば、プレゼントなどでは、高いものが選ばれることもあります。
僕自身の買い物の経験では、コンパクトデジカメを買いに行ったときに機能的には同じようなものなのですが、値段が1万円ぐらい違っていたことがありました。そのときには、店員に根掘り葉掘り質問して、結局1万円高い方を買いました。カタログを見ているだけでは分からない「1万円の違い」があったからです。
価格以外であれば、情緒的ベネフィットで選ぶ人が多いと思います。以下がその例です。
より信頼できるセールスパーソンから買いたい。
より理念に共感できる販売店から買いたい。
より環境に気を配っているメーカーから買いたい。
地域貢献してくれている企業から買いたい。
などなど、こういうことは枚挙にいとまがありません。
言い換えると「製造あるいは販売会社およびその社員への信頼・信用」ということです。
最強の購入動機である自己実現ベネフィット
わからない人から見れば「クズ同然」のものに高い金を支払う人はいくらでもいます。
あるいは、「クズ」ではないが、それでも数千万円も払うほどのものだろうかというものもあります。高級スポーツカーや高級時計などです。
これらのものを購入する動機には、「自分へのご褒美」などの自己満足に近い部分もあります。
ただ、それだけではありません。愛好家仲間や世間からの尊敬や羨望を受けるという「自己実現」的な面が大きいのです。
高級ブランドの商品のほとんどは、このような「自己実現」の夢を叶えてくれます。
高級ブランドだけではありません。
「意識の高い」人がこぞって買う商品があれば、それは自己実現ベネフィットを与えてくれます。
その商品の所有(have)が、その人のあり方(be)のシンボルになるような商品には「自己実現ベネフィット」があると言えます。
一時期のAppleの製品はまさにそうでした。今はどうだか僕には分からなくなってきましたが。
以上、まとめますと、「機能」はあたりまえで、選んでもらいたいなら「情緒」を攻めよ、そして「自己実現」があればなおいい、ということになります。